ヘヤピンマッチ製作のための 計算式
 自分でも解ったような…、解らんような…なので まとめてみました。
ヘヤピンマッチは、アンテナのインピーダンス50Ω未満の整合によく用いられます。
ヘヤピンの形をしたあの 導線です・・・ 
あれは、何者なのか、実際の形状は、どのように決めるのか?
 設計方法を 計算式を使って求めて行きます。
ヘアピンマッチは L、C のマッチング回路です。
あのヘアピンマッチのヘヤピンは コイル(L)です。
髪留めのヘアピン型をした導線を使うことからヘアピンマッチと呼ばれています。
又、C は 外付けするのではなく、アンテナ自身に(C)を持たせて
 
ヘヤピン(L)を外付けするのみで LCのマッチング部を構成しています。
C は 共振周波数より エレメントを短くすることで、アンテナに C を持たせることができます。
アナライザー等では X の部分 - が容量性リアクタンスの意味になります。
ヘアピンマッチで、50Ωジャストにマッチングを取る時、
アンテナの抵抗 Rと 容量性リアクタンス XCの値の組み合わせは決まっています。     
どのような値の組み合わせなのか それは計算式によって決まっています。
計算式① 
アンテナの抵抗値をRとし、アンテナを50オームにマッチングを取るために必要な
 XCは 
 ① XC=√ (R*(50-R))となります。
簡単な計算でやって見ると Rが25Ωの時 XCは25Ωとなります。
◎(容量性の場合は -25と表現する)
また このアンテナを50Ωにマッチングを取るために接続する
 XLは 
 ② XL=(R²+XC²)/XC で求めます。
   (ヘヤピンの L を求めるのに必要)
 上記の条件では  XLは 50Ωとなります。
XC² を ①式で分子を置き換えれば XL=(50*R)/XCで求められます。
XLが求まれば 使用周波数における ヘヤピンのインダクタンスが出せます。
 ヘヤピンのインダクタンス L は下記で求められます。
 L(μH)は 
 ③ L=XL/ω  (ωは2πf(MHz))です。π=パイ
一度 計算して納得してみます。
R=25 XC=25(X=-25) 周波数21.1では 
ヘヤピンのインダクタンスは 0.377144μH となるはずです。
いつも使っている Smith というスミスチャートソフトで確認してみます。
 
イメージ 1
上記と同じ 諸条件を入力し
Lをパラに入れて 377.14nH=0.377μH 50+j0とでました。
原理がわかっていれば、ソフトを使うほうが計算が楽です。
このSmithはフリーソフトです。
またMMANAでもオプションで簡単に計算してくれます。
追記)
上の図 Smithの DP1の 青い円上にマウスを当てると
50Ωに対応する RとXの 値を計算せずに読み取れます。
CURSORの所に出てきます。
 
下半分が -JX 上半分が +JXになります。
希望値でクリックし センターの 50オームでクリックすればコイル、コンデンサーの値が出てきます。
下半分の時は Lをパラに 上半分の時はCをパラに入れます。
エクセルで 表にしてみました。
ヘヤピンマッチ計算
L=XL/(2πf)     (L=μH)     (f= MHz)
XC=√(R(50-R)) 50Ωにマッチングを取るとき
XL=(R²+XC²)/XC R=アンテナの抵抗値
                         50Ωの時      50Ωの時            周波数  周波数  周波数
                  R           XC                XL              7.05     14.1     21.1
 アンテナ抵抗 容量性リアクタンス  誘導性リアクタンス   L(μH) L(μH) L(μH)
      10  20.00       25.00            0.564   0.282   0.189
      15    22.91         32.73            0.739   0.369   0.247 
      20  24.49         40.82            0.922   0.461   0.308
      25      25.00         50.00            1.129   0.564   0.377 
      30      24.49         61.24            1.382   0.691   0.462 
      35      22.91         76.38            1.724   0.862   0.576 
      40      20.00       100.00            2.258   1.129   0.754 
実際に計算してみると 解った気になります・・・。
計算式を入れておくと 楽ちんです。
追記)
実際の調整では
アンテナのRが 25Ωとすれば XCを25Ω(-25)の容量性を持たせるようにエレメントを短くしていく。
アンテナアナライザーは必須(ひっす)でしょう。あれば早い
エレメントを短くすると微妙にRも(1-2Ω)変化します。
いたちごっこになるので 目安程度でOKですが・・・
ヘヤピン構造の実際の計算
市販アンテナのヘヤピンは 線径 線間 長さ様々です。
自作する場合も線径、線間をどのように形状を決めればいいのでしょうか?
ヘヤピンのインダクタンスが求まったので
次はそのインダクタンスにあう 実際のヘヤピンの制作のための計算です。
ヘヤピンの形を決めるためには まず、その形状のヘヤピンの特性インピーダンスを求めなければなりません。平行二線式線路の公式になります。
インピーダンスは 使用する線径 中心間の距離で決まります。
厳密な計算式は省きますが    
イメージ 2
④ Z ≒ 276log(2D/s)   s直径(mm)  D中心間(mm) で求めます。
  Z ≒ 277log(2D/s)   国家試験では、log277としています。
 
直径 S=5mm 中心間 D=50mmを使った平行二線式線路のインピーダンスは    
上記公式より   Z ≒ 359 Ωになります。
      276 log (2X50/5)= 276 log(20)
入手できる線径で計算してみるといいでしょう。
 関数電卓 http://tomari.org/main/java/dentaku_kansuu.html
次に目的とするインダクタスの平行二線式線路の長さです。
一番手っ取り早いのは 上記計算で ヘヤピンのインピーダンスがわかったので
MMANAのオプションを使って ヘヤピンの長さを出すことです。
追記) 
長さ 1/4λ 以下の ショートスタブは コイルとして働く。
--------------------------------------------------------------
これを計算で出すには、どう計算させているのでしょうか?
平行二線式給電線の インダクタンス計算になるでしょう。
jωL=jZo tan(βℓ)
L= Zo tan(βℓ)/ω
ここから 受端短絡線路の受端から距離ℓを求めます。
L はヘヤピンのインダクタンス
Zo は平行二線式給電線のインピーダンス
βは線路の位相定数です、無損失の平行二線式給電線の場合、
β=2π/λ となります。λは波長です。 π=パイです。
ω は 2πf(MHz)
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フィーダーのインピーダンスが分かっていればいればMMANAで 
答え一発で出ます。
注)ここの計算式の説明が出来ません・・・ m(_ _)m
いつも 答え一発でやってました。・・・
フィーダーの短縮率も影響してきますので 
実際は L メーターで実測して見ないと計算通りにはいきませんが
大体の数値はつかめます。
イメージ 3
コイルなら 慣れているので簡単に巻けて インダクタンスも勘で作れます
伸ばしたり縮めたりで インダクタンスの微調整も可能です。
ここで疑問。。。
なぜ ヘヤピンなのか・・・ 耐候性 耐久性 コストの問題なのでしょうか?
 
耐候性 耐久性、コストを無視すればコイルでOKですよね・・・
コイルの場合は 上記 解1 XS  0.378 μH になります。
ちなみに 上記 ヘヤピンの長さは L2s(ショートスタブ) 0.0214λに 設定短縮率を掛けて 29.7cm
L2o オープンスタブの場合は 376.8cm・・・長・・・ です。
以下 続く・・・